見つけられない男たち

おかげさまで歯茎の違和感はなくなりました。
ブログは「晴れたらいいね」だけど、腫れたらいやや(お酒飲まれへんもの)、と思っていたのでよかった。
鍼の先生が言うには、左の背中と肩がいつもより凝っていたそうで、それにプラスでやっぱりビタミン不足もあったかもしれません。
ということで、昨夜はクン・ウー・パイクの迫力あるピアノを生で聴いた後(彼のピアノを弾く手もよく見える席で、堪能しました)は、さっそく飲んで帰ってきたのでした。

ところで、今日は、何で男は探しモノを見つけられないのだ、と、ちょっとそのあたりの、男と女の違いを書きたいと思います。
最近までは特に私の夫がひどいのか、と思っていたのだけれど、どうも夫ばかりともいえないようなので。

例えば夫の場合、冷蔵庫を開けて何か探しても、探せないことがよくあります。
ちょっと物をずらして後ろや横を見るとかしないのですね。
いや、それ以前に、目の前にあっても見えていないようなのです。

今日も食卓の冷奴の小鉢のすぐ横に、醤油を置いているのに気づかず、別の醤油をわざわざ出してきて使っていました。
呆れるというより、またか、と思いますが、先日はほんとうに女同士ではたぶんそんなことにはならないだろうなということがあって、なんとも複雑な思いがしました。

ひと月前のことです。ちょうど大阪女性文芸協会の大きなイベントの二日前のことでした。
夫の大学時代の友人が交通事故で亡くなったのです。
私が昼間、喫茶店でたまたま読んだ家では購読していない新聞の記事で知りました。
免許を取ったばかりの10代の人がアクセルとブレーキを間違えて人をはねたという記事でした。
事故現場が私たちが会議で使用する会場の近くだったので、気になってくわしく読んだら、そこに彼の名前があって、震えました。
夫も彼も大阪の人間ですが、大学は北海道でした。
若い時は頻繁に行き来していた仲でしたが、お互いが職業を持つようになって、なかなか会えなくなり、おまけに夫の方は他人との交際をこまめにするような性格ではないので、彼が実家から出て一人暮らしをし住所が変わるうちに、いつしか彼の連絡先もわからないようになっていたのです。
もっとも、夫の電話番号だけはまったく変わっていない(そもそも私たちが住んでいるこの家がもともと夫の実家だった)ので、彼からの電話は稀にですがあったのです。
ですから、亡くなったと知り、呆然とした夫は、お通夜や告別式がどこで行われるか知る手段がすぐに浮かばず、結局、北海道に住む、かろうじて電話番号を知っている別の友人に訃報を知らせ、彼の連絡先を知ろうとしました。
北海道の友人は、すでに、別の大阪にいる友人からFAXで情報を得ていたもので、さっそく飛行機を手配し、夫ともその別の友人とも、お通夜に伺う約束をすることができたのでした。
ここまでは、女でも男でも、そのうちいつか会えると思っているうちに連絡が取れなくなって、そうなってしまったということで、おかしな話でもありません。

ところが、ここからの話が、私にしてみればなんとも不可解な話になるのです。
めいめいが約束の時間通りお通夜には行ったものの会えなかったのです。
葬儀場の入り口で会って、共にご焼香をするはずが、夫は「一時間以上も立って待っていたのにわからなかった。会えなかった」と言うのです。
亡くなった彼も含めて男同士4人で会った最後は7年前でした。
そのときも、若かった昔とはかなり頭髪や体型が変わっていて、なかなかすぐにはわからなかったそうなのですが、ケータイもある現在、どうして上手に会えなかったものか、不思議でなりません。
西宮にある会場の最寄の駅に着いたという連絡までは直前にケータイで北海道の友人からあったと夫は言います。
ところがその後、夫は一時間以上もお通夜にみえた人々を入り口でしっかり一人ずつ見ていたのに判らなかったそうで、ずいぶん遅くなってから焼香し、ご遺族にご挨拶をしてから、葬儀場を出たところでケータイで北海道の友人に電話してみたら、「約束した場所で待ったけれど会えなかったから」と、既に宿泊予約した神戸の三宮のホテルに行ってしまっていたというのです。
夫は翌日の告別式の日には朝から重要な仕事があって、反対方向にある友人のホテルまでそれから行くこともできにくく、加えてお通夜のご遺族の姿や、亡くなった彼との思い出が込み上げてきて、辛くなり、まっすぐ家へ肩を落として帰ってきました。
北海道の友人は、翌日の告別式にも参列したのですが、FAXで葬儀を知らせてくれた別の友人にも結局会えず、北海道へ戻った後で、電話でそのときのお互い状況を長い間話し合っておりました。

私は協会のイベントと重なり、亡くなった彼のお通夜にもお葬式にも行くことが叶わなかったので、彼のご冥福をただただ祈るばかりですが、彼の死に衝撃を受けた上に、せっかく遠くから駆けつけた友人とも会えなかった夫は、自嘲気味に「男って、そんなもの」と言います。
しかし、女同士なら、あまり聞かない話だな、と私は思います。
よほどテンネンの女か、認知症になったか、でないかぎり。
ホテルに引き上げてしまった北海道の友人も諦めるのが早すぎる。
もういいか、と諦めるタイミングとか、物があってもない、つまり物(この場合は者)を見てもちゃんと見ていないとか、そもそもの約束の仕方とか、どうもそのへんが男と女、大きく違うのではないかと思うのです。

今日、テーブルの上に置かれた冷奴の醤油二つ。
冷蔵庫の中のものを見つけられない亭主というのは、聞いてみたらあんがい周囲に多いのです。
醤油から、ひと月前のことを思い出し、ちょっと書きたくなりました。
この部分、この違いが、男性中心で選考を進めていた時代に、女の書く小説は女が読まなければ判らない、と27年前に私たちの先輩が立ち上がって大阪女性文芸賞を作った動機にもどこか重なるところがあるような気がするのです。


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テーマ : 日記
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

尾川裕子

Author:尾川裕子
大阪女性文芸協会代表
日本文藝家協会会員

「晴れたらいいね」というタイトルは、「毎日が明るい日であればいいね」と思う気持ちと主催している文学賞の応募者に「あなたの作品が受賞できたらいいね」という思いを重ねたものです。

応募希望者は「応募希望者へ」と「大阪女性文芸賞」のカテゴリをごらんください。

おしゃべりと食べることお酒を飲むことが大好きです。
文学だけでなく歴史オタクでもあります。
どうぞよろしく。

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