(7) 小男の草子と一寸法師

時空を超えて(7)

「小男の草子」は、有名な「一寸法師」の物語の元になる話だ、といわれているけれど
具体的に、小さな男、という以外にどこがどう二つの話はつながるのだろうか。
そのあたりを今日は書いてみたい。
ちなみにこのシリーズ(1)でも小男の草子の話は書いた。
よければ訪問者は↑クリックしてそちらも読んでください。

さて、この二つの話をつなぐ鍵は、和歌、である。

小男の草子は、そもそも和歌の持つ呪力が垣根を越えて高貴な姫を捕らえ
めでたく夫婦になったという物語である。
前にも書いたが、そこには日本の古代からの言霊信仰が存在してある。
57577という、たった31文字と独特のリズム、
そういうものが関係するのか、特に和歌に言霊の力があると信仰されていたのか、
和歌のおかげで奇蹟を生じたという話が他にもいくつかある。

そうした特別な力のある「和歌」だが
平安時代に、和歌の神様ベスト3、いわゆる「和歌三神
とよばれるものが出来た(昔から御三家作るの好きなのですね)。
住吉明神(大阪の住吉大社の神)、玉津島明神(和歌山の和歌の浦にある神社。聖武天皇の時代に出来た神社だそうで、元々は若の浦だったんだけど)、柿本人麻呂(人麻呂を入れずに北野天満宮の場合もある)の3つである。

柿本人麻呂以外は人間ではなく神社に祭られた神である。
(もっとも人麻呂も神となって人丸神社におさまっているし、玉津島明神も光孝天皇が衣通姫が玉津島明神として出てくる夢を見たというので=衣通姫のことになるけれど)

神社の神は時代によりさまざまな物語を持つよう変化するもので(祭神自体も変わったりする)、住吉の神も、玉津島神もそれなりにその時代の人々の思いやこじつけ(失礼!)でそのように変化したのだと思うが。
ただ、そうした「変化」が、この二つの話を比較する場合重要な気がする。

住吉明神は、住吉大社神代記に軽皇子(たくさんいるうちのどの軽皇子だろう、私は読んでいないので不明。読んでも不明かもしれないけれど)と歌を交わしたり、伊勢物語でも歌を交わし、梁塵秘抄口伝集の冒頭にも用明天皇の時代に、和歌ではなく歌謡の歌だが、声のよい歌の上手い土師氏の男の歌に唱和し、ばれそうになって逃げて住吉の浦に沈んだという熒惑星(火星)の話が書かれている。
住吉の神は昔から星と関係があるといわれているので、これなども歌と神が関わる話に入る。
(しかも、土師氏の男が歌が上手くて今様の元になったという伝承だが、土師氏はそもそも殉死を止めるべく古墳に埋める埴輪を作った氏族で、葬礼や陵墓に関わる仕事をした、つまり、「遊び」に近い氏族である。遊びと歌とも関わるこの部分も面白い。しかも土師氏から菅原道真の菅原氏は出ているからなおさら面白い話である。さらに熒惑星というのは予言と関わる童謡わざうた、呪力のある歌を司っている星らしい)

話を戻そう。
一寸法師は子供のいない老夫婦が住吉大社にお願いして授かった小さな子、
つまり、住吉明神の申し子である。
この子が上京して、高貴な姫を手に入れ、鬼退治をして、
打出小槌で身長も伸び、めでたしめでたしとなる物語だ。
一寸法師に和歌はあまり関係ないのだが、
背景に和歌の力を持つ「住吉明神の申し子」だから、
和歌の呪術という陰のキーワードで、共通し、
「小男の草子」と「一寸法師」はつながるのである。
           ──この話には続きがすこしあります。次回に。
                     
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テーマ : 雑記
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

尾川裕子

Author:尾川裕子
大阪女性文芸協会代表
日本文藝家協会会員

「晴れたらいいね」というタイトルは、「毎日が明るい日であればいいね」と思う気持ちと主催している文学賞の応募者に「あなたの作品が受賞できたらいいね」という思いを重ねたものです。

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おしゃべりと食べることお酒を飲むことが大好きです。
文学だけでなく歴史オタクでもあります。
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